「保険料を払い続けるくらいなら、そのぶん貯金しておいたほうがいいのかな」。うちの子のシニア期の備えを考えるとき、私も何度かそう思いました。けれど、貯金で備えるなら、いったいいくら貯めておけば安心なのか。その目安が分からないままでは、決めようがありません。

※イメージ画像です(AIにより生成)
この記事では、犬の年間診療費の平均や、保険会社が公開している治療費・保険金の事例をもとに、「保険に入らない場合の貯金額」を考えるための目安と、具体的な手順を整理します。どちらが正解という話ではなく、判断の材料を並べる記事です。
結論:「通院費の積み立て」と「高額治療の備え」を分けて考えると、目安が立てやすい
先に要点です。貯金で備える場合は、次の2つを分けて考えると、必要な額がイメージしやすくなります。
- 日常の通院・軽い治療の分:年齢とともに増える、毎年の診療費
- 突発的な入院・手術の分:いつ来るか分からない、まとまった出費
公開されている事例では、1回の治療で10万〜30万円ほどかかった例があり、保険金だけで50万〜70万円台が支払われた例もありました。「通院費1年分+入院・手術1回分」を最低ラインに、それ以上の高額治療を想定するかどうかで、必要な額が変わってきます。
この記事でわかること
- 犬の年間診療費の平均(年齢別の傾向)
- 公式に公開された治療費・保険金の事例
- 貯金額を考える3つの目安ライン
- 貯金と保険を比べるときの視点、具体的な手順
犬の年間診療費は、年齢とともに増える
アニコムの「家庭どうぶつ白書2023」では、2021年度のペット保険契約データ(約73万頭)をもとに、年齢別の平均年間診療費が示されています。報道によれば、犬の平均は1歳で約5.1万円、15歳で約24.0万円と、約4.7倍に増えています。犬の平均寿命は14.2歳と、過去最長でした。
ここで注意したいのは、これは「保険に入っている犬」の平均だということです。また、あくまで平均なので、病気やケガの有無で、実際の費用は大きく上下します。それでも、「シニア期は年間20万円台の診療費になることがある」という目安にはなります。
公式に公開された治療費・保険金の事例
実際に、1回の治療にいくらかかったのか。保険会社が公式サイトで公開している事例を見てみます。
アクサダイレクトの犬の事例(治療費総額)
| 犬種・年齢 | 病名・内容 | 治療費総額 |
|---|---|---|
| スタンダード・プードル 2歳 | 前足骨折・通院7回 | 166,481円 |
| 柴犬 3歳 | 中耳炎・通院9回 | 105,656円 |
| ミックス 2歳 | 通院・入院19回 | 227,080円 |
| ミニチュアダックス 9歳 | 脊髄損傷・入院2回 | 277,112円 |
たとえば、ミニチュアダックスの事例では、治療費の総額が277,112円でした。補償割合70%の保険であれば、自己負担は83,134円、保険金は193,978円と、同じページに示されています。保険に入っていない場合は、この277,112円を全額、自己負担することになります。
PS保険の高額保険金事例(お支払い保険金額)
| 年月 | 犬の体格 | 病名 | お支払い保険金 |
|---|---|---|---|
| 2026年8月 | 小型犬 | 水腎症、敗血症など | 744,000円 |
| 2026年8月 | 小型犬 | 膝蓋骨内方脱臼 | 614,000円 |
| 2026年8月 | 小型犬 | 腫瘍 | 550,000円 |
| 2026年7月 | 中型犬 | 肛門脱、悪性リンパ腫 | 600,000円 |
こちらは診療費ではなく、保険会社が支払った保険金の額です。保険金は診療費を超えることはないので、診療費の総額は、これらの額以上だったと考えられます。つまり、まれなケースとはいえ、50万〜70万円を超える治療費がかかる可能性は、ゼロではありません。
貯金額を考える3つの目安ライン
事例をふまえて、仮に3つのラインで考えてみます。数字は、考え方を示すための一例です。
| ライン | 想定する場面 | 目安の金額(仮) |
|---|---|---|
| ① 日常 | 通院・軽い治療(シニア期の1年分) | 約20〜25万円 |
| ② 中規模 | 入院・手術を伴う治療(1回) | 約10〜30万円 |
| ③ 高額 | 長期の治療、大きな手術など | 50万円以上 |
①は、アニコムの調査で15歳の平均年間診療費が約24万円だったことから。②は、アクサダイレクトの事例で、治療費が約10万〜28万円だったことから。③は、PS保険の事例で、保険金だけで50万円台〜70万円台が支払われていることから、目安にしました。
たとえば「①+②」を最低ラインにするなら、約30〜55万円。③まで備えるなら、100万円前後が必要になる計算です。もちろん、この全額が必ずかかるわけではありませんが、「いざという時に自己負担できる金額」としては、これくらいが目安になります。
貯金と保険を比べるときの視点
貯金で備えるか、保険に入るか。比べる視点を整理します。
| 貯金で備える | 保険に入る | |
|---|---|---|
| 使えるようになる時期 | 貯まるまでは足りないことがある | 契約後(待機期間のあと)から補償される |
| 払うお金 | 使わなければ手元に残る | 使わなくても保険料は戻らない |
| 高額な治療 | 貯金額を超えると自己負担が重い | 補償割合や限度額の範囲で支払われる |
| 少額の通院 | 気軽に使える | 免責金額などで対象外になることがある |
小型犬の例で、10歳以上で保険料が月6,430円の商品なら、年に約7.7万円です。同じ金額を毎年積み立てれば、10年で77万円になります。ただし、貯まる前に高額な治療が来る可能性もあります。保険料の目安は「ペット保険は年齢でいくら上がる?保険料の目安」でも整理しています。
見落としがちな費用と、費用の見通しの立て方
貯金で備えるときは、診療費そのもの以外にかかるお金も忘れがちです。
- 検査費用、お薬代、療養食(病気に合わせた食事)の費用
- 夜間・休日の診療を受けた場合の、診察料の上乗せ(病院によって異なります)
- 通院の交通費や、介護用品(おむつ、滑り止めマットなど)の費用
費用の見通しを立てるコツは、治療を始める前に、概算の見積りを動物病院に聞いておくことです。治療の選択肢が複数ある場合は、それぞれの費用の目安と、期待できる効果を、先生に相談してみましょう。納得して選べるだけで、「こんなにかかるとは思わなかった」という不安は減らせます。
なお、ペットの治療費は、税金の医療費控除の対象にならないのが原則です。「保険に入らず貯金で備える」場合は、費用が全額、手元のお金から出ていくことを前提に考えておきましょう。
貯金で備える場合の手順
貯金で備えると決めたときは、次のように進めると続けやすいと思います。
- 目標額を決める:まずは「①日常+②中規模」の約30〜55万円を目安にする
- 専用の口座を作る:生活費と分けて、愛犬の医療費専用にする
- 毎月の積み立て額を決める:保険料に相当する額(例:月5,000〜7,000円)を積み立てる
- 使うときのルールを決める:通院費は貯金から、など、あらかじめ決めておく
- 年に一度、見直す:年齢が上がるごとに、目標額を見直す
積み立てのシミュレーション(利息を考えない仮計算)
毎月の積み立て額ごとに、貯まる金額の目安をまとめました。
| 毎月の積み立て | 1年 | 5年 | 10年 |
|---|---|---|---|
| 3,000円 | 36,000円 | 180,000円 | 360,000円 |
| 5,000円 | 60,000円 | 300,000円 | 600,000円 |
| 7,000円 | 84,000円 | 420,000円 | 840,000円 |
| 10,000円 | 120,000円 | 600,000円 | 1,200,000円 |
先ほどの目標(約30〜55万円)に届くまでの期間は、月5,000円なら5〜9年ほど、月10,000円なら3〜5年ほどです。愛犬の年齢が高いほど、貯まるまでに病気やケガが来る可能性は高くなります。シニア期に入ってから始めるなら、まとまった金額を最初に入れておくことも検討してください。
保険と貯金を組み合わせる方法
どちらか一方に決めなくても、組み合わせる方法もあります。たとえば、通院費は貯金で、入院・手術のような大きな出費だけ保険で備える、という考え方です。アニコム損保の「どうぶつ健保しにあ」のように、入院・手術のみを補償する商品もあります(通院は対象外)。自分の家計と、愛犬の状態に合わせて、組み合わせを考えてみるのもおすすめです。
まとめ
- 犬の年間診療費は、年齢とともに増え、15歳では1歳の約4.7倍になったという報告がある
- 1回の治療で10万〜30万円かかった事例があり、保険金だけで50万〜70万円台が支払われた例もある
- 貯金で備えるなら、「通院費の積み立て」と「高額治療の備え」を分けて目標額を考える
- 貯金は貯まるまでの時間がかかる点と、保険は使わなくても保険料が戻らない点を比べて決める
よくある質問(FAQ)
Q. 貯金で備えるなら、いくらあれば十分ですか?
「十分」と言い切れる金額はありません。この記事では、通院費1年分と入院・手術1回分を足した約30〜55万円を最低ライン、高額な治療まで想定するなら100万円前後を目安に紹介しました。家計に無理のない範囲で決めてください。
Q. 若い犬のうちは、貯金だけで大丈夫ですか?
若い犬は平均の診療費が低い傾向にありますが、ケガや急な病気は年齢に関係なく起こります。事例の中にも2〜3歳の犬の治療費があります。
Q. 保険と貯金、結局どちらがいいですか?
どちらが正解とは言えません。家計の余裕、愛犬の年齢や健康状態、治療費の備え方への考え方で決まります。迷う場合は、両方の見積りを出して比べてみてください。
Q. 貯金が貯まる前に、高額な治療が必要になったらどうしますか?
動物病院によっては、分割払いや、治療の優先順位の相談に応じてくれることがあります。まずはかかりつけの先生に、費用の見通しや選択肢を相談してみましょう。
