シニア犬の混合ワクチンは何歳まで?世界小動物獣医師会の2024年ガイドラインの考え方

診察台の上で、獣医師の手にやさしく撫でられている、白い毛が混じった犬 シニア犬の健康と食事

診察台の上で、獣医師の手にやさしく撫でられている、白い毛が混じった犬

※イメージ画像です(AIにより生成)

「うちの子は、もう高齢だから、混合ワクチンは卒業してもいいのでは」「毎年打つべきか、迷っている」——シニア犬の飼い主さんから、よく聞かれる疑問です。この記事では、世界小動物獣医師会(WSAVA)のワクチネーションガイドライン(2024年版)の記載を、飼い主向けに整理します。

結論から言うと、このガイドラインのQ&Aには、「ある年齢に達したら、犬へのワクチン接種をやめるのは適切ではない。コア(必須)ワクチンについては、現在の推奨は、生涯にわたって、3年以上の間隔で再接種すること」と書かれています。さらに、高齢犬については、3年ごと、またはそれより頻繁に再接種することが推奨できるとも書かれています。

ただし、これは国際的な獣医師団体の指針で、日本の法律ではありません。実際の接種は、愛犬の健康状態を知っている、かかりつけの獣医師と相談して決めてください。

この記事でわかること

  • WSAVAガイドラインとは
  • 「何歳でやめる」という考え方について
  • 高齢犬の免疫についての記載
  • 抗体検査の位置づけ
  • コアワクチン以外(レプトスピラなど)の考え方
  • 日本の事情で確認できなかったこと
  • かかりつけ医に聞くこと

WSAVAガイドラインとは

WSAVA(世界小動物獣医師会)の「ワクチネーションガイドライン作成グループ」が作成した、犬と猫のワクチン接種についての国際的な指針です。2024年版は、「Journal of Small Animal Practice」に掲載されています。獣医師向けの指針で、日本語の完全な公式訳は、今回確認できませんでした(2015年版の日本語版はWSAVAのサイトにありますが、この記事は、2024年版の英語の原文にもとづいています)。

「何歳でやめる」という考え方について

ガイドラインのQ&A「高齢の犬へのワクチン接種を、何歳で安全にやめられるか」には、次のように書かれています(筆者の要約)。

  • ある年齢に達したからといって、犬へのワクチン接種をやめるのは適切ではない
  • コアワクチン(弱毒生ワクチン)については、生涯にわたり、「3年よりも頻繁にならない間隔」で再接種することが、現在の推奨
  • レプトスピラのワクチンや、コア以外のワクチンを使う場合は、通常、毎年の接種が必要

「コアワクチン」とは、ガイドラインでは、犬ジステンパー(CDV)、犬アデノウイルス(CAV)、犬パルボウイルス(CPV)に対するものとされています。

高齢犬の免疫についての記載

ガイドラインの本文には、次のような記載があります(筆者の要約)。

内容 記載
高齢期に特別な接種プログラムが必要か 生涯を通じて、ガイドラインに沿って接種されてきた高齢の犬・猫が、高齢期に、特別な、または強化されたコアワクチンの再接種プログラムを必要とする、というエビデンスは少ない
免疫の記憶 ほとんどの高齢の犬・猫は、コアワクチン(弱毒生)に対する免疫の記憶が続いているというエビデンスがあり、1回のワクチン接種で、すぐに防御を取り戻す
新しい病原体への反応 高齢の動物は、これまで出会ったことのない病原体に対する、最初の免疫反応を作るのが、あまり得意でない可能性がある
ある研究 最後の接種から3年を超えた高齢犬(geriatric dogs)は、1〜3年前に接種した高齢犬に比べて、ジステンパーとアデノウイルスに対する防御に十分な抗体価を持つ割合が低かった。これらの犬の、再接種への反応は調べられていない
結論 これらの結果から、高齢のペットへの再接種は、3年ごと、またはそれより頻繁に行うことが推奨できる

つまり、「高齢だから、もう打たなくていい」とも、「高齢だから、毎年必ず打つべき」とも書かれていません。生涯にわたって、3年以上の間隔で、場合によってはそれより頻繁に、というのが、ガイドラインの整理です。

抗体検査の位置づけ

ガイドラインには、次のように書かれています(筆者の要約)。

  • 成犬では、コアワクチン(ジステンパー、アデノウイルス、パルボウイルス)の再接種を決める際に、血清(抗体)検査の結果を、判断の材料にできる
  • ワクチン接種後に、抗体ができたこと(セロコンバージョン)を確認するためにも使える。これは、若い動物での確認として書かれている

抗体検査の結果の読み方は、検査の種類や、検査機関によって異なるとも書かれています(検査機関によって、「防御されている」と判定される基準が違う場合がある、という趣旨)。

日本で受けられる抗体検査の、費用や、検査できる病院は、今回確認した資料には書かれていませんでした。

日本の事情で確認できなかったこと

  • 日本で使われている、各混合ワクチン(5種、6種、8種など)の、添付文書上の接種間隔
  • 日本の動物病院での、一般的な接種間隔の実態
  • 抗体検査の、費用と、実施している動物病院
  • 持病がある犬、薬を飲んでいる犬、副反応の経験がある犬の、接種の判断(ガイドラインの別の部分に書かれている可能性がありますが、この記事では確認していません)
  • 年齢別の、副反応のリスク
  • ワクチン接種の費用
  • 狂犬病予防注射(法律にもとづく別の制度です。関連記事「犬の狂犬病予防注射|2027年3月の制度変更とシニア犬の猶予」をご覧ください)

かかりつけ医に聞くこと(筆者の整理)

以下は、ガイドラインの内容をもとにした、筆者の整理(相談のときの質問の例)です。

質問の例 理由
これまでの接種の記録(日付と種類)は、どうなっていますか ガイドラインは、最後の接種からの年数(3年を超えているか)に触れている
今回の混合ワクチンは、何種ですか。レプトスピラは含まれますか レプトスピラや、コア以外のワクチンは、通常、毎年の接種とされている
抗体検査を、判断の材料にできますか ガイドラインは、成犬の判断の材料にできると書いている
持病や、飲んでいる薬を考えて、接種して問題ないですか 愛犬の健康状態は、かかりつけ医が把握している
接種後に、気をつけることは何ですか 副反応が出た場合の連絡先を確認しておく

よくある質問(FAQ)

Q1. 何歳まで、混合ワクチンを打てばいいですか。

WSAVAガイドラインには、ある年齢に達したら、接種をやめるのは適切ではないと書かれています。日本の実情や、愛犬の状態をふまえた判断は、かかりつけの獣医師に相談してください。

Q2. 毎年、打たないといけませんか。

ガイドラインには、コアワクチンは、3年よりも頻繁にならない間隔での再接種が推奨と書かれています。レプトスピラのワクチンやコア以外のワクチンは、通常、毎年と書かれています。日本のワクチンの種類ごとの実際は、今回確認していません。

Q3. 高齢犬は、3年ごとで、大丈夫ですか。

ガイドラインには、最後の接種から3年を超えた高齢犬は、抗体価が十分な割合が低かった研究があり、高齢のペットの再接種は、3年ごと、またはそれより頻繁にと推奨できると書かれています。

Q4. 抗体検査を受けたほうがいいですか。

ガイドラインには、成犬のコアワクチンの再接種を決める際に、判断材料にできると書かれています。受けるかどうかは、かかりつけ医と相談してください。

Q5. 狂犬病予防注射も、同じ考え方ですか。

別の制度です。狂犬病予防注射は、法律にもとづくため、この記事では扱いません。関連記事で整理しています。

まとめ

  • WSAVAガイドライン(2024年版)には、ある年齢に達したら、ワクチン接種をやめるのは適切ではないと書かれている
  • コアワクチンは、生涯にわたり、3年よりも頻繁にならない間隔での再接種が推奨。高齢犬は、3年ごと、またはそれより頻繁にと推奨できると書かれている
  • 成犬では、抗体検査の結果を、再接種を決める判断材料にできる
  • これは、国際的な獣医師団体の、獣医師向けの指針。日本の法律や、各ワクチンの添付文書とは別。接種は、かかりつけの獣医師と相談して決める

参考にした公的情報・資料(2026年11月2日確認)

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